歯にはそれぞれ「神経」とも呼ばれる歯髄というものが存在します。むし歯で歯のエナメル質や象牙質が侵されると、むし歯はこの歯髄に達します。むし歯が歯髄に達すると、激しい痛みを伴いながら歯髄が侵食され、歯髄炎や根尖性歯周炎という病気になり、治療が困難になっていきます。
通常、むし歯が歯髄に達すると、この歯髄を取る「抜髄」という処置がなされますが、歯髄を抜いた歯は「失活歯」という活動をしていない歯になってしまいます。数年後には治療が終わっていてもある日突然割れてしまうこともあります。また、生活反応を示さないため感染に弱く、二次カリエス(むし歯の再発)などにもなりやすくなってしまいます。このような場合は、歯を抜かなくてはいけない可能性が高くなってしまいます。
このように、失活した歯は大幅に寿命が短くなります。
しかし近年、この抜髄という処置になる可能性がある歯でも、残せる治療法が出来ました。それがMTAセメントを使った断髄という治療です。断髄とはむし歯が進行したところまでの組織を取り除き、MTAセメントによって蓋をすることにより、神経の生活反応を残したまま保存する方法です。もちろん、全てのケースに適応されるわけではありませんが、歯の神経を残す最後のチャンスとしての治療が可能となりました。
(参考文献:半田 慶介, 安田 善之, 斎藤 隆史 2008年 新規直接覆髄剤としてのMineral Trioxide Aggregate(MTA)について北海道医療大学歯学雑誌 ではMTAセメントは神経を残すのに有効な材料として挙げられています。)
前述したとおり、生活歯と失活歯では歯の寿命や耐久性、感染に対する抵抗力が大きく異なります。ですから、我々歯科医師としても出来る限り歯髄を残せるようにしたいというのが本音です。最近では、このことをご存知患者様もおられ、MTAセメントによる治療を希望される方も少なくありません。しかし、MTAセメントは万能ではありません。MTAセメントによる治療が可能かどうかは、歯を削り、むし歯を取り除いてみないとわからないこともあります。ですから、MTAセメントによる治療をご希望されても、むし歯を取りきった際に歯髄を残すことが出来ないとうことも可能性としてあることをご理解頂く必要があります。とはいえ、歯の生活反応を残せるチャンスがあるのであれば、私たちは最後の手段としてMTAセメントをご提案することがございます。しっかり説明を聞いた上で、歯の神経を残したいと思われた際にご決断下さい。
MTAセメントが可能な目安としては、「自発痛」があるかどうかが一つのポイントととなってきます。自発痛とは、何もしていないときでもズキズキ痛むことです。自発痛が出始めると、むし歯が歯髄を侵食している可能性が高くなり、MTAによる治療が困難となります。MTAがあるからまだ大丈夫と思わずに、歯に違和感を感じたらいち早く歯科に通うこと、または定期検診に通ってむし歯が進行する前に治療をすることが、歯を守る上では最も有効な手段と言えます。
種類 | 説明 | 料金 |
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MTAセメント |
露髄部への覆髄や治療、歯髄保護として主に使用する歯科用セメントを利用して、抜髄せずに神経を残す方法 治療期間…1日、治療回数…1回 ※別途補綴の治療機関等がかかります。 |
税込55,000円 ※別途補綴の費用がかかります 詰め物 税込33,000円〜49,500円 被せ物 税込77,000円〜1430,000円 |
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